富山の天気について、気象予報士の目で見たつぶやきです。気象理解の参考になります。富山県ナチュラリスト協会に投稿したものなど、誰でも理解できるものにしてあります。もしわからないところがあれば、遠慮なくご質問ください。
令和5年夏の記録的な猛暑
令和5年度の夏が暑かったことに間違いはありませんが、どの程度だったのでしょうか。富山県内アメダス観測点10地点すべての過去データが公開されていますので、誰でも調べることができます。やってみましょう。
気象庁のホームページから、ホーム > 各種データ・資料 > 過去の気象データ・ダウンロード と進めていきます。
https://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/obsdl/index.php
(下のQRコードを読み込むとすぐに行けます。)
上のような『過去の気象データ・ダウンロード』が出てきます。まず、赤枠内を順番に指定してください。指定された内容が、黄枠内に表示されます。最後の表示オプションは気にしないでください。指定したら、「CSVファイルをダウンロード」をクリックします。「data.csv」という名前でダウンロードされますので、エクセルで開きます。最初に、ファイル形式をエクセルブックなどに変更(拡張子を.xlsxなど)して保存した後、作業すれば使いやすいと思います。
いろいろな方法がありますが、富山と伏木の猛暑日と熱帯夜の年ごとの日数合計を調べてグラフにしました。
今年の夏は、過去にないほど暑かった様子が分かります。地点差もあるので、念のために、富山県内アメダス観測点10地点の8月の平均気温も調べました。朝日を除く9地点で、過去最高でした。富山と秋ケ島では、月平均気温が30℃を超えました。これだけの数値を示せば、今年の夏の異常な暑さを説明できると思います。
また、海水面も簡単に気象庁ホームページで調べられます。
https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/monthly/sst_HQ.html
今年の7月と8月の月平均海水温を平年値と比較したものを載せてみました。両月とも平年値より高く、特に8月は3℃以上と記録的になったことが分かります。
気象庁ホームページには、これら以外にも、いろいろな魅力的なデータがたくさんあります。ニュースなどの報道で聞くことも多いと思いますが、きちんとしたデータを示して説明できるようにしたいですね。ぜひ、活用してみてください。
雲の色
ナチュラリスト協会機関紙「広場」に寄稿しました。その中で、少し補足説明が必要だと思われるところがありましたので、本文とともに掲載します。
自然解説をしているときに、「雲は何色でしょうか」と、ときどき参加者に質問します。白色、灰色と答えられます。そこで、「雲の正体は何ですか」と聞くと、水蒸気(間違いですが、水蒸気は「無色透明です」と説明すると理解されます)や水、氷と答えられます。水や氷は、大きな状態では無色透明ですが、小さな粒になると乱反射で白く見えることを説明すれば、雲が白く見えることを理解してもらえます。
参考となりそうなページのリンクを掲載します。
雲の正体
ナチュラリスト向けに寄稿しました。その中で、少し気になったところがあったので、本文とともに掲載します。
1 雲の正体
大気の気象現象を司っているのは、『水』です。図1は、中学校で学習した「水の状態変化」です。
水は約100℃で水蒸気になると思っている方も多いのですが、実際は20℃前後の水でも表面から蒸発して水蒸気になります。逆に20℃前後の空気の中に、水ではなく、水蒸気がたくさん含まれています。いつも目にしている空気に、水蒸気がたくさん含まれています。水蒸気は無色透明(空気も同じ)なので、忘れてしまいがちですが、冷たい飲み物を入れたグラスに結露ができたり、冷凍庫に霜が付いたりする現象を考えれば、理解できると思います。中学校で、空気の成分は、窒素約78%、酸素約21%、アルゴンなどその他1%と教え、水蒸気(約1%~4%)を無視しているのも水蒸気の存在を忘れる一つの要因でしょう。
確認のため、啓林館と東京書籍の現行教科書(採択率1位と2位)の記載状況を確認しました。
いずれの教科書にも、水蒸気の割合 約1%~4% の記載はありませんでした。水蒸気の割合が変動して決められないのと、水蒸気の数字を入れると、窒素や酸素の割合が相対的に減って、生徒が割合の数字を覚えにくいという配慮だと思います。配慮の理由は理解できるのですが、2年生の理科で空気中の水蒸気を学習することを考えれば、但し書きで、「実際の空気には、水蒸気(約1%~4%)が含まれている」があればよいと思われます。
晴れなのにくもり(春)
タイトルをつけるのに苦労しました。富山県で春によくある現象です。低気圧や前線が通過した後で、天気が回復し、天気予報的には当たっていて「晴れ」なのですが、実際は雲がとれず、日差しがないので、気温が上がらないので肌寒く感じる天気です。弱い雨が降ることもあります。
特定はできませんが、地上付近の北寄りの湿った風によって、雲がとれなかったものだと考えられます。継続して調査していこうと思います。
黄砂飛翔の様子
黄砂が飛翔して日本に来る様子と予想が、数値予報をもとに公開されています。
https://www.data.jma.go.jp/gmd/env/kosa/fcst/
令和5年4月12日のモデルによる解析
令和5年4月12日の衛星画像(可視画像)
国土交通省レーダーの活用
国土交通省レーダーは、違った周波数帯の電波を使っており、異常伝搬の確認に効果があります。
同じ時刻もので比較すると、異常伝搬によるエコーがよくわかります。Xバンドレーダーのものは、黄砂によるものだと推定されます。
海外のレーダーが予報に有効(特に韓国)
日本のレーダーが、日本付近を網羅しています。しかし、もう少し外側を知りたい場合があると思います。その場合には、windyが便利です。
右下の『雷』をスライドさせれば、雷の発生地点も表示されます。使用に当たっては、データの信頼性を考慮してください。
天気が西側から変わることを考えれば、韓国の情報が重要だと考えられます。
レーダー > 天気画像 (kma.go.kr) に直接アクセスしてください。
雲がないのに、レーダーに映る雲(晴天エコー)
令和5年3月は快晴の日が多く、毎日のように、朝のレーダー画像にエコー(雲)が映りました。慣れていないアナウンサーは、『県内のところどころに雨を降らす雲が見られます』と言っていましたが、雨を降らす雲どころか、雲が全くない快晴です。様子を映像にしました。リンクをクリックすると新しいページが開きます。
発生日 令和5年3月15日の様子レーダー画像 3月20日の様子レーダー画像
令和5年3月20日の参考資料 衛星画像 エマグラム(GFS推定)
原因は、レーダーで使っている電波が、異常伝搬により屈折するからです。レーダー画像からは取り除くことはできないようです。
可視光で起こる蜃気楼や逃げ水と同じ現象です。実際に、この現象が見られた日の多くでは、魚津で蜃気楼が発生しています。蜃気楼発生予報と考えれば楽しいかもしれません。
大寒寒波の前に輪島の高層観測が止まる
令和5年1月、大寒に猛烈な寒波が来ると言うことで、輪島の高層天気を知りたいと思い、ゾンデ観測結果を調べると止まっていた。火災があったとのこと。
とりあえず、2月28日までの冬期間は手動で観測しました。寒波には間に合ったようですが、日本の高層観測の脆弱さが分かったように思います。
令和5年1月寒波の様子